garop-rabit 臨床心理士の日誌

臨床心理士という仕事をしています。仕事のことやキャリアのことを中心に書きたいと思っています

臨床心理士としてのキャリアの重ね方について(1、学生の頃にすればよかったと思うこと)

今日は台風の影響で予定をキャンセルせざるを得ず自宅待機の方もたくさん居られる事と思います。私もそのうちの一人で、空いてしまった時間をどのように埋めようかと思いながら文章をしたためています。

 

学会シーズンに差し掛かりつつあるこの時期は土日と言えども忙しくされている方も多いのではないでしょうか。家庭を持つまでは土日に研修を入れている方も多いと思いますし、案外この仕事をしていると休日が休日じゃない!ということも珍しくありません。

私自身もそのような状況で、月に2日は日曜日に研修が入っていたりします。

 

今日のタイトルはキャリアについてです。

これは臨床心理士という仕事に限った事では無いですが、日本の教育は諸外国に比べて自分のキャリアを考えるための教育が少ない様に思われます。

そのため、世の中を渡り歩くための知識や、人生の中で持っていると便利な地図とコンパスが手元に無い中で自分の職業人生をスタートする羽目になってしまうという事が珍しくなく、私もそのような若者の一人だったように思います。

本当は臨床心理専攻の大学院のM1やM2の時に知っていると良かったのにな。1年目、2年目の時に考えておけると良かったのになというキャリアの重ね方について何回かに分けて書いてみたいと思います。

 

【大学院生の頃にすると良かったなと思うこと】

大学院に所属している時期は授業や実習、修論の作成やアルバイトなど、やらなければいけない事は割と多いものの、比較的自由な時間も多かったりします。

研究室の仲間や同級生、実習先など様々な人との関わりも多く、その先に様々なキャリアの選択肢がある状態です。自分の修士論文のテーマや、臨床の興味関心を深めたり、興味はあるのだけど自分に向いているかどうかなど振り返りながら自分のキャリアを見つめる時期であると思います。

 

私がこの時期にやっておけば良かった。解っちゃいたけど出来ていなかったなと思う事は以下の3つでしょうか・・・いやいや、もっとあるかも・・・

 

1,修士論文の作成・研究をしっかりやっておけばよかった

2年間という時間を掛けてある程度じっくり研究に取り掛かれるというのは、大学院を出てしまうと中々難しいものです。

質的な研究でも量的な研究でも、この時期に客観的な見方やものの考え方を身に着けることはその後の臨床実践を行うにあたっても、地に足をつけてものを考えられる様になるための一つの要素となると思います。

それに、修論として一旦まとめた後でも学会発表をすることや、学会誌に論文として投稿できるし、その過程でも様々な専門家と知り合うことにも結び付いたり、自分のキャリアを広げて行くきっかけにもなったりします。

 

私の場合、大学院を修了した年に指導教官と世間話をしていた折に、「簡単にまとめてポスターで発表してみれば」と言われて、比較的小規模な学会でポスターを出しましたが、その時にその分野の第一人者の先生とお話をする機会が出来たり、何故か地元を離れた学会発表の地で地元の臨床家の方と顔見知りになって、その後の臨床が少しやり易くなるなど、犬も歩けば棒に当たる的な不思議な展開がそこでは生まれました。

 

2,実習を通して様々な領域での臨床を経験しておけば良かった

大学院の授業では実習が必須科目ではありますが、時間が許すようなら自分の興味のある領域や、興味は無くても知っておくと良いかもしれないという領域について実習をする機会があると良いんじゃないかなと思います。

現場に出てからも、他領域の専門職と連携をする時にどのような援助が行われているのかイメージする事や、クライエントの環境調整を検討する時などには学生の時分に見聞きした他の領域に関する知識が役立つことなどもあります。

それに、実習先にそのまま就職するという、学びと生活が直結する場合なども珍しい事ではありません。

 

実は私も、直接就職したのとは場合が異なりますが、現場に出てから数年経った頃にかつての実習先から声を掛けて頂いて、職を得るなんて言う事が起こりました。

時分に出来る範囲で無理の無い程度に学生をやりながら経験を積む事や、そこで人脈を広げていく事はその後のキャリアにもプラスの影響をもたらしてくれることと思います。

 

3,臨床系のアルバイトが出来るとよかった

首都圏では臨床心理士が殆ど飽和状態と言っても良いので、大学院生にまでアルバイトは中々廻って来ませんが、地方では結構実習よりもアルバイトをすることで臨床経験を積むことが出来る場合があります。

もう10年近く前に「臨床家 河合隼雄」という本でも河合先生が海外で研修をしている時に無給の実習では無く、有給の研修を行いながら研鑽を深めたという部分があったように思いますが、その仕事を行う責任を感じながら臨床に取り組む時間を持つという事は何よりの学びに直結するように思います。

そこから得た収入を自己研鑽や自己投資に充てるなどして、日々の生活や臨床が豊かになっていくという生活のスタイルが学生の時から身についていることは、その後に社会に出てからも自分を成長させてくれる要素が多い様に思います。

 

これからの大学・大学院では公認心理師のカリキュラムに対応するために大学側が実習先を用意してくれて、そこで規定されている内容を学ぶという事になるのだろうと思いますが、社会に出てしまったらそこの部分の構造と言うか、自分の中で持っているべき枠組みを自分で作る必要があるでしょう。

学校がそのような枠組みを提供してくれることは、ある程度の教育の質を担保することは出来るかもしれませんが、自律的に自らの資質を向上させていくための推進力のようなものが出にくくなってしまわないかと少し危惧します。

 

 

そんなこんなで、文章を書いているうちに段々と雨風が強くなって来ました。

今年は各地で自然の力が猛威を振るっています。被害が少ない事を祈りつつ、また後日この続きを書いて行きたいと思います。